kukkameri通信

kukkameri 通信 #04 Lotta Maija

Illustration by Asako Aratani

第4回 ロッタ・マイヤさん

インタビューを終えて、kukkameriの二人がそれぞれ感じたことを言葉と絵で表現します。

“風をまとう花たち”

内山さつき

ロッタさんがデザインした「Tuulahdus(トゥーラフドゥス)」は、私の大好きなマリメッコのワンピース。このワンピースと出会うまで、私にとってマリメッコは、好きな柄はたくさんあるのに、なかなかしっくりくるワンピースが見つからない、という難しいブランドでした。ウニッコのような鮮やかな、そしてフィンランドデザインの代名詞のようなマリメッコのワンピースに身を包むことにずっと憧れてはいたのですが、試着してみるとなんかこう、どちらかというと柄に着られているような感じになってしまって、私には似合わなかったのです。

それでもやっぱり、いつかさらっとマリメッコのワンピースが着たいなあと気長に探し続けて5年目のこと、たまたま開いていたオンラインショップで「Tuulahdus」のワンピースを見つけたとき、あ、これだ!と思いました。草原の中で風にそよぐ、楽しげにダンスをしているかのような白い愛らしい花たち。なんて気持ちのよいデザインだろう、と思いました。そして画面を見つめ考えること数秒、私にしては思い切ったことに試着もしないで、ポチ! 
果たして届いたワンピースに袖を通してみると、あの楽しげな花たちは、体にすっと寄り添うように流れるようなラインを作ってくれて、やっぱり私が欲しかったのはこれなんだ!と心から嬉しくなったのでした。

そんな思い入れのある一枚だっただけに、都内で偶然お会いしたロッタさんが(お会いした経緯は新谷の通信に書かれていますよ)、「Tuulahdus」の生みの親だったなんて、本当に驚きました。そして、そのデザインが生まれた背景を聞くことができて、「わたしのワンピース」への愛着はひとしお。
フィンランドのサマーハウスで出会った、海から吹く風になびく草原と花たち。ロッタさんのワンピースを着るたびに、その美しい風景が目に浮かんで、まるで私自身も軽やかな風をまとっているみたいな気持ちになれるのです。

踊るように軽やかに描く姿に惹かれて

新谷麻佐子

ロッタさんと初めて会ったのは、Hyvää Matkaa!で開催されていたフィンランド人アーティストのトークショー。会場を見渡すと「かわいらしい外国の方がいるなあ。フィンランドの方かな?」とぼんやり思っていたら、なんと! マリメッコのデザイナーさんでした。スマホで作品を見せてもらって驚きました。私がスマホの壁紙にしている「Kasvio カスヴィオ」をデザインした方でした。

彼女に再び会ったのは、それから約3ヶ月後。私たちは都内のとあるティールームで、ロッタさんをお待ちしていました。今回、マリメッコのデザイナーさんに英語でインタビューということで、ちょっぴり緊張していた私。そこへまるで春風にのってきたかのように(1月の寒い日でしたが)、ふわりと軽やかにロッタさんが笑顔で現れ、私の緊張は一気に解けて、ガールズトークのような楽しいひとときが始まりました。

その日、ロッタさんは、白いモコモコのコートを着て、大好きだという石本藤雄さんがデザインしたトートバッグを持ち、頭には水色のカチューシャを身につけていました。気になって聞いてみると「以前、お気に入りのカチューシャがあったのだけど、なくしてしまって。ちょうど日本に来る前に、似ているこの水色のカチューシャを見つけたんです!」と、とてもうれしそうに話すロッタさん。まるで小さな女の子が、お気に入りの髪飾りについて語っているかのようにチャーミングだったので、とても印象に残っています。

そう、ロッタさんのインタビューを通して感じたのは、変わらない彼女の純粋な心。やりたいことに向かって真っ直ぐ突き進む姿は、ともすれば、貪欲さ、強欲さみたいなものがにじみ出てしまうと思うのですが(もちろんそれが悪いということではないのですけどね)、それがまったく感じられず、いたって軽やか。きっと素敵なおばあさまの愛情と影響をたっぷり受けた幼少期から変わらず、各時代に出会った恩師や友人、巡ってきた仕事のチャンスや仲間に感謝し、真摯に向き合い、素直に吸収してきたのだろうなと思いました。

もちろん、その裏にはきっとたくさんの努力、トライ&エラーもあったことでしょう。多摩美で取り組んだガラス制作の話でも、もがく姿を見せてくれましたが、なんだかその困難さえも楽しみ、軽やかに踊っているかのように見えるのです。そう、彼女が描く、カラフルな花のダンスのように。

ロッタさんは、自分はつくづく平面の人間だと言いながら、とても楽しそうに立体作品に挑戦しています。新たな素材との出会いが、これからどんな化学反応を起こすのか。本当に楽しみです。

あと、次回会う時には、ヘルシンキからスウェーデンまでのボート旅の話もじっくり聞いてみたいです。本当になんと勇敢なことでしょう! でも、フィンランドの友人に聞いたらめずらしいことではないようで……。フィンランドの人たちにとってボートがいかに身近な乗り物なのか、知ってはいるつもりだけど、毎回驚いてしまいます。

Lotta Maija ロッタ・マイヤの記事 <前編> <中編> <後編>

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