M それはもう宝くじに当たったような気分です。きっかけは、アート・デパートメントが募集するゲストアーティストに応募したことでした。ゲストアーティストに選ばれると、1年間、アラビアのゲストルームで制作できます。そこでは大きな窯や特殊な釉薬など、特別な設備や材料を使うことができるのです。私は、2019年、そのゲストアーティストに選ばれました。
M アラビア・アート・デパートメント・ソサエティは、現在12人が在籍しています。私たちは一緒にグループ展を開催することもあります。2023年、アラビアは150周年を迎えました。その記念に、アーティスト1人につき、15個のジャーの型を使って作品を制作しました。作品は、アラビアストアで販売されています。
アラビア・アート・デパートメント・ソサエティのメンバー。Photo by Chikako Haradaアラビア150周年記念のマリアンネさんの作品「Juhlat / Cocktail」(2023)。Photo by Anna Autio なお、マリアンネさんは、アラビア・アート・デパートメント・ソサエティの独立20周年を記念した展覧会 「Atelier Life」にも、他の9人のアーティストと共に参加している。 建築家のエリエル・サーリネンが仲間と建てた「Hvitträsk(ヴィトゥレスク)」にて、 2023年6月9日から9月30日まで開催中。
M 石本さんがプロデュースする愛媛のギャラリー「Mustakivi(ムスタキビ)」で、2019年に個展「Orangeria-the Ceramic Garden of Infinite Summer(永遠の夏)」を開催しました。柑橘系の植物を育てる温室「オランジェリア」を訪れたのをきっかけに制作したアートピースを展示したのですが、中でも、松山の風景であるみかん畑をモチーフにした作品「Mandariinitarha(みかん畑)」は、幅2メートル、高さが私の身長くらいあり、これまで制作した中で、今のところ一番大きい作品になります。この作品は、松山の後、美濃のコンペティションに出品し、特別賞を受賞。世界を周り、最終的にはニューヨークのコレクターの方に購入していただきました。
松山のみかん畑をモチーフにした作品「Mandariinitarha」(2019年)Photo by Jefunne Gimpel
――そもそもマリアンネさんが日本に興味を持ったきっかけは?
M なぜかずっと日本に興味がありました。それに昔からスタジオに来る人たちに「あなたの作品は日本っぽいね」と言われることが多かったのです。私自身は、日本っぽいものを作ろうなんて思ったことはなく、作りたいものを作った結果、何か日本に通じるものがある。実際に日本に来てみると、皆さんとても親切でいい方ばかりですし、文化も興味深いです。「もったいない」という考え方や、小さな器に料理を美しく盛りつける文化にも惹かれますし、日本に来るといつも家に帰ってきたと感じます。
M WAFINの二人は、もともと友人です。二人は私にとって日本でのカント(根っこ)。WAFINのプロジェクトは、チャレンジの要素が強いですが、私としては、可能性しか感じません。正直、当初考えていたものよりも、大きく成長していると思いますし、今後まだまだ進化していくでしょう。その過程で、私が貢献できることがあれば、喜んで参加したいです。
カントに込めた思いについて語るマリアンネさん。Photo by Satsuki Uchiyama
――テキスタイルデザインの仕事も続けていますね。最近のお仕事についてお聞かせください。
M 2018年から、フィンランドのテキスタイルデザインブランド「Finarte(フィンアルテ)」のアートディレクターを務めています。ブランド全体のディレクションもしますし、ラグやクッションカバーなど、商品のデザインも手がけています。
Photo by Finarte
M 最近では、フィンランド国立博物館のために、「VÄRE」というパターンをデザインしました。ヘルシンキにある国立博物館の建物からインスピレーションを得て、描いています。こちらのデザインは、ノートやカード、ラッピングペーパーなど、ステーショナリーに使われています。
国立博物館のためのパターン「VÄRE」シリーズ。撮影も国立博物館で行われた。Photo by Finarte/Cristian Jakowleff
M 「VÄRE」のパターンは、Finarteのクッションやラグにも使われています。
Finarte の「VÄRE」シリーズ。Photo by Finarte/Cristian Jakowleff
M 同じくフィンランドのテキスタイルブランド「ラプアン カンクリ」とも仕事をしました。2023年の秋に発売予定です。日本でも販売されると聞いていますので、日本の皆さんにも手に取っていただけるとうれしいです。
M 正直なところ、3年前に思い描いていた夢が、予定より早いペースで実現しています。大きなターニングポイントになったのは、ニューヨークの大きなギャラリーと契約を結んだこと。ちゃんと契約を結んで、作品を売ることができているということは、アーティストとしてとても大事なことです。他にミラノのギャラリーとも契約を結び、ロンドンのギャラリーとは、新しい取り組みをスタートさせました。